【ビジネス実務マナー検定】 終業時間外の誘いの意味を考える

第66回 ビジネス実務マナー検定3級(対人関係)より

【問題】

新人の井上恵美が仕事を終え帰ろうとしたところ、係長の木村里沙から、「おいしいコーヒーの店がある。ごちそうするけど少し時間ある?」と誘われた。井上はコーヒーが苦手で、ほとんど飲まない。このような場合井上は、係長の誘いにどのように対応するのがよいか。次の中から適当と思われるものを一つ選びなさい。

(1)誘いはうれしいが、コーヒーが苦手なので遠慮すると言って断る。
(2)今日は時間がないので、別の日に誘ってもらいたいと言って断る。
(3)コーヒーが飲めないので他のものを頼むがよいか、と尋ねてからお供する。
(4)すまないがコーヒーが飲めないので、別の人を誘ったらどうかと言って断る。
(5)お供させてもらうと言って一緒に行き、コーヒーを注文するが無理して飲まない。
 
 

【解説】

 食事や飲み会など、就業時間外に声をかけられることはビジネスの場ではよくあります。対人関係の領域から、そのような誘いの意味と対応を考えます。
係長は現場を指揮監督するのが役割です。個々の課員について知り、円滑な人間関係の中で業務が行われるように、常に心を砕いているものです。新人は特に気にかかるでしょう。職場になじめているか、仕事に慣れたか、悩みはないかなど心配は尽きません。井上に声をかけた木村係長が、自分のお気に入りのコーヒー店で、プライベートな話題や雑談を交えながら、リラックスした雰囲気の中でコミュニケーションを図ろうと考えたことは容易に想像がつきます。単においしいコーヒーを飲ませたいわけではないのです。井上としては、係長の考え方や業務で分からないことを聞くチャンスと捉えて、誘いに応じるのがよいのです。とはいえ井上はコーヒーが苦手なのですから、コーヒーが飲めないことは正直に話しておくのが誠実な対応です。従って(3)の対応が適当となります。(3)を選んだ受験者は68%でした。

 その他の選択肢を見ていきましょう。

 (1)(2)(4)は、係長の気持ちを酌むことなく誘いを断っており不適当です。相手は係長であり、誘いの本当の意図を察することができれば、このような断り方はできないはずです。

 (1)は、係長の意図が想像できていない典型的な対応です。コーヒーが苦手という理由だけで断るのはあまりにも素っ気なく、社会人としては稚拙です。「誘いはうれしいが」の言葉があるからよいと考えたのか、22.8%の受験者が(1)を選びました。

 (2)はその場しのぎの答え方です。本当に予定があるならこう言って断るのも仕方がありませんが、設問にそのような設定はありません。うそをついて断る不誠実な対応と言わざるを得ません。(2)を選んだ受験者は1.5%でした。

 (4)も、なぜ井上に声をかけたのか理解していない答え方です。「あなたでなければ誘う意味がないのよ」という係長の心の声が聞こえてきそうです。1.2%の受験者が(4)を選びました。


 (5)は、係長の誘いを受けていますが、注文したコーヒーを飲まなければ、連れてきた係長は気にするでしょうし、体調が悪いのかと心配するかもしれません。かえって気を煩わせることになってしまうので不適当。注文後に実はコーヒーが苦手だと分かるよりも、事前に伝える方が誠実な性格は伝わるでしょう。(5)を選んだ受験者は6.3%でした。


 上司や取引先からの誘いは避けて通れません。コーヒーや酒など自分の苦手とするものを相手が好んで誘ってくることもありますが、言い方や対応次第で相手に気を使わせたり、気分を害してしまうこともあります。せっかくの誘いですからいかに上手に受けるか、本問を通じてご指導いただきたいです。
 (『就職指導ニュースvol.55』より)