【秘書検定】 相手と用件を正しく理解して上司の不在に対応する

第132回 秘書検定2級(職務知識)より

【問題】

秘書Aの上司(部長)は、体調が良くないとのことで、今日は休むことになった。次はこの日に、Aが行ったことである。中から不適当と思われるものを一つ選びなさい。

(1)課長が発注書に承認印をもらいに来たとき、今日でなければ駄目か尋ねた。
(2)常務からの電話には、事情を話し、急ぎなら部長に連絡を入れるがと言った。
(3)部長会議の当番議長に、今日の会議は他の日に変更してもらえないかと申し出た。
(4)打ち合わせの予定だった部下には事情を話し、次の予定は改めて知らせると伝えた。
(5)取引銀行の支店長が転勤のあいさつに来訪したので、課長に伝えて応対してもらった。



【解説】

  上司が突然休んだり不在になったりするのは日常的によく起きることです。そのようなとき、スケジュール調整や不意の来客などに対し、上司の留守を預かる秘書として、冷静な判断と臨機応変な対応ができるかが問われます。さまざまな人や状況を酌みとって適切な判断をすることは、経験のない生徒・学生には難しいでしょう。設問をよく読み、「相手は誰か」「用件は何か」を正確に理解することが大切で、それに加えて設問に書かれていない職務の知識を補足して考える必要があります。

 不適当は(3)。受験者の58.8%が選択しました。相手は「部長会議の当番議長」恐らく他部署の部長です。この選択肢を考える場合には、部長会議とは何かという知識が必要です。部長会議にはAの上司以外の部長も出席します。それぞれ部長という立場上忙しくしているのですから、Aの上司の都合だけで変更できるものではありません。Aの上司の欠席で会議に不都合が生じるなら、当番議長が対応を考えるでしょう。秘書Aから会議の日程変更を申し出るのは、差し出がましいことであり不適当です。

 その他は、適当な対応です。

 (2)を選んだ受験者は18.5%でした。相手は「常務」、用件は「(上司宛ての)電話」。常務は社内の人であり上司の上役なのですから、体調不良を隠す必要はありません。(2)を選んだ受験者は、常務には上司の体調不良を隠した方が良いと考えたのかもしれませんが、理由が分からない不在の方が心証は悪いでしょう。社会人であれば選ばない選択肢ですが、生徒・学生には上司と常務の関係が分からなかったのかもしれません。上司の上役からの電話ということは何か対応が必要になるかもしれないので、常務にきちんと事情を話した上で、急ぎなら部長に連絡すると伝えたのは適切な対応です。

 (1)は14.0%の受験者が選びました。相手は「課長」、用件は「発注書に承認印をもらう」。課長は部長の直属の部下であり、発注書は相手先に発注(注文)するための文書。上司(部長)の承認がもらえたら発注するのです。その件を承認するかしないかは上司でなければ分からないのですから、「今日でなければ駄目か」と尋ねたのは適切な対応です。その結果、待てると言われれば預かり、待てないと言われたら次の手だて(上司に電話して指示を仰ぐなど)を課長と相談して考えることになります。

 (5)は6.8%。相手は「取引銀行の支店長」。用件は「転勤のあいさつ」。会社にとって取引銀行というのは、こちらが世話になる側いわゆる客先です。「転勤」という言葉から、支店長が忙しくあいさつ回りをしている状況や、取引銀行との関係は続くもののこの支店長と今後は会うことはなく、この先世話になるのは次の支店長であるといった関係性が想像できるかどうかがポイントです。この場合、代理の者(課長)に応対してもらうのは相手の忙しさに配慮した適切な対応です。社会人には当たり前のことですが、生徒・学生には指導が必要でしょう。

 (4)を選んだ受験者はほとんどいませんでした。相手が「部下」ならば上司の事情を話し、打ち合わせを延期して予定を決めずに待たせる対応は適切です。
 職務知識は、職務に関する基本的な知識なしには解答できない問題もあります。生徒・学生にはなじみがない内容も多いため、そこを補う指導が必要です。指導の際には、ベースとなる知識の習得を徹底していただきたいと存じます。

 (『就職指導ニュース』vol.55より)