【サービス接遇検定】 閉店間際のお客さまにも、満足してもらえるように対応する

第60回 サービス接遇検定3級(専門知識)より

【問題】

 キャンプ用品専門店のスタッフ谷山晴夫が閉店の準備をしていると、お客さまが「よかった!間に合った」と言いながら来店して、登山靴を見せてもらいたいと言う。この場合谷山はどのように対応するのがよいか。次の中から不適当と思われるものを一つ選びなさい。

(1)登山靴売り場の場所を教え、案内が必要な場合は声をかけてもらいたいと言って作業を進める。
(2)間もなく閉店なので、急ぐ事情がなければ明日以降に来店してもらえないかとお願いしてみる。
(3)「滑り込みセーフですね」と軽口を言い、作業の手を止めて客を売り場に案内して靴選びを手伝う。
(4)閉店時間になったら入り口のシャッターは閉めるが、気にしないでもらいたいと言って作業を進める。
(5)そろそろ閉店時間なのでゆっくり見てもらうことはできないが、それでもよければと言って対応する。



【解説】

 スタッフが閉店準備をしているところに、お客さまが登山靴を見せてもらいたいと言って来店したという状況です。来店時にお客さまが「よかった!間に合った」と言っていることから、スタッフが閉店準備をしている様子を見ており、閉店時間の間際であることも分かっているものと判断できます。このような状況でのお客さま対応はどのようにするのがよいのでしょうか。

 不適当は(2)。この選択肢を選んだ受験者は50.1%でした。設問にある「よかった!間に合った」というお客さまの言葉から、急ぐ事情があることは容易に想像がつきます。このような場合、店側としては、限られた時間でもできるだけの対応をするのがよいことになります。間もなく閉店であると店側の都合を伝えて明日以降の来店をお願いしたのでは、「今日中に登山靴を買いたい」というお客さまの希望を満たすことはできません。よって、不適当な対応になります。

 その他の選択肢を見ていきましょう。

 (3)を選んだ受験者は24.1%でした。「滑り込みセーフですね」と軽口を言ったのが、嫌味っぽいため不適当と考えたのでしょうか。お客さまが「よかった!間に合った」と言ったのに対して、「滑り込みセーフですね」とスタッフが返したのは、言い換えれば「間に合ってよかったですね!」という気持ちを込めた愛想言葉です。文字だけではこのような気持ちまで読み取れなかったのかもしれません。閉店時間の間際であることを分かったうえで入ってきたお客さまは、恐らく、どこか申し訳なさそうな様子であったでしょう。軽口(愛想)を言ったのは、そのようなお客さまの気持ちを和らげるためでもあります。閉店準備を中断したことがスタッフとして不適当と考えた受験者もいたかもしれませんが、このような場合、スタッフが自分の作業を中断して接客をするのは、適切な対応です。

 (4)を選んだ受験者は21.5%でした。店内にお客さまがいるのにシャッターを閉めるのが不適当と考えたのでしょうか。しかし、開けたままにしておいては、まだ開いていると思った他のお客さまが入ってきてしまうかもしれません。店の営業時間は決まっており、閉店時間になったら入り口のシャッターを閉めるのは当然のことです。目の前のお客さまに必要な対応をすることと閉店時間を守ることは、店としてはどちらもしなければならないことです。

 (5)を選んだ受験者は2.5%でした。お客さまに間もなく閉店であることと、ゆっくり見てもらうことはできないことを言った上で対応しています。いずれもきちんと現在の状況をお客さまに伝えており、適当な対応です。

 (1)を選んだ受験者は1.9%でした。お客さまに目的の登山靴売り場を教え、案内が必要な場合は声をかけてくれるよう伝えています。お客さまの対応も、改訂準備の作業も滞りなく続けており、適切な対応です。

 店にも守るべき営業時間があります。しかし、閉店間際の時間であっても、せっかく来店してくれたお客さまに満足してもらえるように対応することは、店(スタッフ)の重要な役割であることを考えさせたいですね。

 (『就職指導ニュースvol.55』より)