【秘書検定】 離席して外出する際の基本的な行動

第130回 秘書検定3級(マナー・接遇)より

【問題】

秘書Aは上司から買い物を頼まれた。このような場合、どのようにして外出するのがよいか。次の中から適当と思われるものを一つ選びなさい。

(1) 上司の使いで外出するとメモに書き、それを自分の机の上に置いて外出する。
(2) 上司の指示で買い物に出るのだから、戻る時間を上司にだけ伝えて外出する。
(3) 上司に、すぐ行くが誰に断っておけばよいか尋ねて、その人に伝えて外出する。
(4) 先輩に、上司から買い物を頼まれて外出したいがよいかと許可を得てから外出する。
(5) 隣の席の人に、上司の使いで買い物に行くと言い、戻る予定の時間を伝えて外出する。



【解説】

 基本的な仕事の仕方に関する問題です。設問には「上司から買い物を頼まれた」とありますが、この問題で考えるべきは、業務時間内にちょっとした外出をするときはどのように行動すればよいかという社会人としては“基本中の基本”についてです。

 適当は(5)。Aが離席している間にも、A宛ての電話がかかってきたり他部署の人が尋ねてきたりすることがあるかもしれません。そのようなときに隣の席の人に適切に対応してもらえるよう、外出の目的と戻る予定の時間を伝えておくのは必要なことです。もし周囲の人にそれらを告げずに出かけてしまうと、Aがどこへ行ったか、いつ戻るのかが分からず困ったことになります。会社によってはホワイトボードや掲示板に行き先や戻る時間を書くこともありますが、それも目的は同じです。(5)を適当とした受験者は36.1%、正答率は非常に低い結果となりました。

 その他の選択肢を見ていきましょう。

 (1)を選んだ受験者は25.6%。周囲に声をかけると仕事の手を止めさせてしまう、迷惑になると考え、メモを残して自己完結をするのは適当と考えたのでしょうか。ですが、これは的外れな気遣いと言わざるを得ません。メモだけではAの席まで来て机上を見ないと離席している理由が分からず、しかも「外出する」だけでは戻る時間も分かりません。これでは何かあったときに周囲の人が適切に対応できないため、よほど迷惑がかかることになります。また、3級受験者には「メモ」という単語を見るとつい選んでしまう人がいるようですが、選択肢をよく読んで考えることが大切です。

 (2)は10.3%。会社では多くの人がチームで仕事をしており、秘書Aも上司としか関わらないわけではありません。上司に用事のある人が秘書であるAを通すだけでなく、A自身に用事がある人もいます。戻る時間を上司にしか伝えていないのでは、(1)同様、何かあったときに周囲の人が対応できないため不適当です。

 (3)18.2%。この選択肢も多くの受験者が選びました。3級受験者は、何でも上司に確認してからと考える傾向にありますが、上司を煩わせないように自分で判断すべきこともあります。「誰に断って(伝えて)おけばよいか」は、上司に尋ねるようなことではないため不適当です。

 (4)は9.7%。買い物のための外出が上司の指示である以上、先輩が許可しないということは考えられません。また、設問のどこにも先輩と一緒に仕事をしているなどの設定はありません。この場合は、先輩の許可は不要です。

 3級を勉強していると「メモ」「上司への確認」などは適当な対応であることが多く、それらの文言が含まれた選択肢に多くの受験者が引っ張られたのではないでしょうか。

 このようなことは、普段から職場で仕事をしている社会人であればだれもが日常的に行っており疑問にも思わないでしょう。ですが、3級受験者の多くを占める生徒・学生には、そのような職場の状況が想像できなかったのか、難易度の高い問題となってしまいました。根底にあるのは経験不足。また、「この行動の結果、どのようなことが起きるか」を想像する力も不足しているのかもしれません。

  ご指導にあたる皆さまは、正解を教えるだけでなく「受験者(特に生徒・学生)が何を知らないのか」を察し、フォローをお願いいたします。画像やテレビ番組などのオフィスの場面を題材にしてイメージを膨らませるなどの方法も有効でしょう。(『就職指導ニュース』vol.54より)