【ビジネス文書検定】 前後の文脈から正しい表現を検討する

第70回 ビジネス文書検定3級(表現技能)より

【問題】

Q.次の枠内は,資料送付の案内状の一部です。この文章を形式の整った案内状にするには,下線部分⑴~⑸をどのような言い方にすればよいか。下の中から適当と思われるものを一つ選び,記号で答えなさい。

【選択肢】

⑴-A 拝受いたしました    B ご拝読いたしました    C ご拝見申し上げました
⑵-A ご恵贈いたしました   B お送りいたしました    C 送らさせていただきました
⑶-A ご検討されますよう   B ご検討になられますよう  C ご検討くださいますよう
⑷-A ご報告してくだされば  B お知らせいただければ   C ご連絡していただければ
⑸-A お申し伝え       B お申し立て        C お申し付け


【解説】

 ビジネス文書で使用する丁寧な表現の中でも、特に基本的な敬語遣いに関する理解を問う問題です。敬語に関しては、文化審議会答申「敬語の指針」(平成19年2月)などの資料で、改めて具体的な使用例を確認しておくとよいでしょう。

 ⑴は、Aが「拝受しました」より改まった言い方であり適当です。Bは謙譲語の「ご~いたす」と謙譲語「拝読」が重なった二重敬語、Cは謙譲語「ご~申し上げる」と謙譲語「拝見」が重なった二重敬語であり不適当です。なお、「拝受」「拝読」「拝見」は意味からするとどれでもよく、ここでは敬語の形式が適当かどうかという観点で解答しなければなりません。

 ⑵は、謙譲語「お~いたす」を使って相手を立てているBが適当です。Aの「恵贈」は贈り主を高める語であり、自分側のこととして使うのは間違いです。またCは「送らさせて~」と「さ入れ言葉」になっているため不適当です。「送らせていただきました」が正しい表現となります。

 ⑶は、Cが適当です。検討してくれるのは相手であり、そのことを尊敬語「ご~くださる」で正しく書き表しています。Aは相手の行為を謙譲語「ご~する」の形にしており、不適当。Bは、尊敬語「ご~になる」+尊敬語「れる」の二重敬語で不適当です。

 ⑷は、Bが「(あなたから私へ)知らせてもらえれば」という意味の謙譲語であり適当です。Aは相手の行為を謙譲語で表しているため不適当。なおかつ「報告」は本来、立場が下の者が上の者にする行為であり、ここでの言葉の用い方としても間違いです。Cも相手の行為を謙譲語で表しているため不適当となります。

 ⑸は、前後の文脈から「気軽に言い付けてください」という意味になればよいことが分かるでしょう。Cの「申し付ける」は「言い付ける(要求・依頼する)」という意味です。それを尊敬語「お~くださる」の形にしているため適当となります。AとBは言葉の意味が間違っています。A「申し伝える」は「言い伝える(伝えておく)」の謙譲語であり不適当です。B「申し立てる」は自分の要望などを強く主張する意味であり、この場合には使えません。

 正しい表現を一つずつ覚えていくのが敬語の一般的な学習方法です。また、間違った(不適当な)敬語のパターンを覚えていくのも効果的です。他検定の敬語問題の対策にもなるため、ぜひ本問をご活用いただきたいです。さらに、適当な選択肢を選ぶ問題であっても選択肢だけを見るのではなく、前後の文脈を読み取ってそれに合った表現を考える必要があることも併せてご指導ください。
 (『就職指導ニュースvol.51』より)