【ビジネス実務マナー検定】 遅刻時の対応と、反省の気持ちを示す振る舞い

第62回 ビジネス実務マナー検定1級(対人関係)より

【問題】

Q. 営業部の谷本礼二が電話を取ると、新人桃井が担当している得意先のY社からで、「先ほど桃井さんが連絡もなく約束の時間に遅れて来た。失礼だが少々教育が足りないのではないか」と言われた。そこで、帰社した桃井に事情を聞くと、電車が遅れて間に合わなかったが15分程度だったし、電車の遅延証明書を相手に渡したので、うそでないことも分かったはず」と不満そうである。このような場合、谷本は桃井にどのようなことを言って注意すればよいか。箇条書きで四つ答えなさい。

【解説】

 取引先を訪問する際に必要な最低限のマナーや常識に関する問題です。桃井は遅刻をした際、先方に対して非常に失礼な振る舞いをしたことを全く自覚していません。桃井の振る舞いの何がいけなかったのか、その理由も含めて指導しなくてはいけないでしょう。

 まず指導すべきは、「ビジネスの現場において遅刻という行為をどのようにとらえるべきか」ということです。解答例は、①たとえ15分であっても遅刻は遅刻。何分だから許されるというものではない、ということです。訪問は、約束の時間を守ることが大原則です。相手は貴重な時間を割いて桃井に会う時間をつくってくれています。1分1秒も無駄にできないビジネス社会においては、「15分程度だから大したことではない」という桃井の考え方は通用しません。友人とのプライベートな待ち合わせとは違うことを自覚して行動しなくてはいけません。

 併せて指導すべきは、「遅刻をする場合の対処方法について」です。解答例は②約束に遅れればY社には迷惑をかけるのですから、遅れると分かった時点で連絡しないといけない、ということです。
訪問時、電車の遅延や道路の渋滞などで約束の時間に間に合わないという状況は起こり得ることです。しかし相手は、こちらの事情など知る由もありません。時間通りに来ると思って待っているのですから、遅れると分かった時点で連絡を入れるのが最低限のマナーです。その際、どのくらい遅れるかの目安(何分ほど)を示すことも大切です。遅れる時間の長さによっては、相手は次の予定を優先させるかもしれないからです。

 さらに、桃井が行った“遅延証明書を取引先に渡す”という非常識な行為を取り上げて注意したいところです。解答例は③遅延証明書は、電車が遅れたことの証明だが、このようなときに使うものではない。④遅れることを連絡せず遅延証明書を渡す非常識は、桃井個人だけでなく会社の信用に関わる、ということです。
 遅延証明書は、鉄道やバス事業者が遅延を公式に証明する目的で発行する証明書。通勤・通学時に電車やバスの遅延で遅刻をした際、遅刻扱いを免除してもらうために提出するのが通常の使い方です。
 桃井は、遅延証明書を渡すことで遅刻の原因を証明しようとしたのでしょう。しかし、相手は遅刻の理由の釈明など求めていません。にもかかわらず「遅延証明書を渡す」という行為は、遅刻を正当化しようとしているだけでなく、桃井が「遅れて申し訳ない」という気持ちを持っていないことをも証明してしまっているのです。
 桃井の非常識な行為は、桃井個人の評価を落とすにとどまらず、会社の信用も失いかねないものです。一人で取引先を訪問させているということは、社員教育を受け上司が一人前だと認めた人間だけです。桃井の非常識な行為によって、「あの会社は教育もろくにできない会社だ」と思われるかもしれません。新人であっても、社外では会社の代表として振る舞わなくてはいけないのです。一つ一つの行動に社会人としての心構えが問われています。

 ①~④の解答例以外に、「今後得意先を訪問する時は、時間に余裕を持たせること」などもOK。遅刻を未然に防ぐ手立てを指導することも大切です。
 (『就職指導ニュースvol.51』より)