【秘書検定】 お客さまの立場や用件など、状況が複雑でも基本的な応対を踏まえて考える

第124回 秘書検定準1級(必要とされる資質)より

【問題】

Q.秘書Aの上司(部長)のところへ、取引先のR部長が転任のあいさつに訪れた。同時に上司の親しい友人が、「近くまで来た。昼食を一緒にと思いちょっと寄ってみた」と言って訪れた。上司はAに何も言わず席を外しているが、特に用事はないはずなのですぐに戻ると思われる。このような場合、Aはどのように対処すればよいか。次の中から適当と思われるものを一つ選びなさい。

⑴ R部長は課長に取り次ぎ、友人は応接室に案内して上司が戻るまでAが相手をする。
⑵ 上司はすぐに戻ると思うので二人にはその場で待ってもらい、上司が戻ったら指示を仰ぐ。
⑶ R部長と友人それぞれに「上司は席を外しているがすぐに戻ると思う。どうするか」と尋ねる。
⑷ R部長は課長に取り次ぎ、友人には「上司は席を外しているがすぐに戻ると思う。待つか」と尋ねる。
⑸ R部長には「長い間世話になった。上司には後で連絡するよう伝える」と言ってAが対応し、友人は上
  司室に通して待ってもらう。

【解説】

 準1級からケース仕立ての問題を取り上げました。2級と比較すると状況設定が少々複雑です。しかし、問題を解くために、まずは状況を整理して理解しなければならないのは2級までと同様。その上で、この場面での基本的な対応はどのようなものか、来客が重なった場合でも基本的な対応でよいのかなどを考えていくことになります。

 まずは状況を整理しましょう。

 上司に関しては、「何も言わず席を外している」というところから、Aは上司の居場所に心当たりはないものと解釈します。選択肢に「上司に連絡する」という内容がないのはそのためです。「すぐに戻ると思われる」の部分はそのままの解釈となります。
 そこへ、不意に2人の客が訪れたのです。それぞれに対する基本的な対応は次のようになります。
一人は取引先のR部長で、来訪の目的は転任のあいさつ。転任のあいさつは儀礼的なものであり、形としてあいさつに来ただけなので、上司が不在であれば上司のすぐ下の役職者(この場合は課長)に取り次ぐのが基本になります。上司がすぐに戻るにしても、待たせるのは不適切です。
 もう一人は上司の親しい友人で、来訪の目的は一緒に昼食を取ること。「近くまで来た」「ちょっと寄ってみた」ということから、約束はしていないこと、時間的には余裕があることが読み取れます。設問に現在の時間は書かれていませんが、友人は上司の都合によっては昼食時間まで待つのも想定内でしょう。ここは状況を伝えて意向を聞くのが妥当な対処となります。

 ここまでの解説で自ずと答えは分かるでしょう。

 適当は⑷。この選択肢を選んだ受験者は66.6%とまずまずの正答率でした。
その他の選択肢を見てみると、⑵⑶はR部長と上司の友人に同じ対応をしています。先に確認した基本的な対応から考えると、⑵R部長にその場で待ってもらい上司が戻ったら指示を仰ぐ、⑶R部長に事情を話してどうするかと尋ねる、というのは不適切です。しかし、⑵を選んだ受験者は11.9%、⑶は16.2%いました。

 ⑵⑶を選んだ受験者は、設定の「(上司は)すぐに戻ると思われる」を問題を解くためのキーワードと捉えたのかもしれません。すぐに戻るのなら、上司が戻ってくるまでR部長には待ってもらってもよいと考えたのでしょう。また、「転任」の場合この先会えなくなるのですから、会えるように取り計らうのが秘書としての気の利かせ方と考えたのかもしれません。
 しかし、この問題ではR部長が上司と特別親しかったなどのことは書かれていないため、基本的な対応に立ち戻って考えるならば、R部長を待たせることになる⑵⑶は不適当ということになります。

 ⑴⑸を選んだ受験者は少数でした。⑴は上司の友人に対して「上司が戻るまでAが相手をする」が不適切。⑸はR部長にAが対応するのは越権行為に当たります。また、⑸ではAが「後で連絡するよう伝える」と言っていますが、連絡するかどうかはR氏との関係性によって上司が判断することなので、この部分も不適切です。

 (『就職指導ニュース』vol.50より)