【サービス接遇検定】 お客さまに寄り添い、事情に合わせた応対とは

第52回 サービス接遇検定3級(対人技能)より

【問題】

Q.ヘアサロンのスタッフ相馬一樹は店長から、「お客さまに得意客になってもらうには、愛想のよい応対で店に親しみを持ってもらうこと」と言われた。次はそのことを意識して行った相馬のお客さま応対である。中から不適当と思われるものを一つ選びなさい。

⑴ 具合が悪いので予約をキャンセルしたいという電話に
 「それは残念ですね。では次のご予約はいつごろになりそうですか」
⑵ 勘違いなのか、定休日に予約をしたいという電話に
 「お受けしたいのはやまやまなんですが、その日は定休日でございます。申し訳ありません」
⑶ 理髪が終わって帰る初めてのお客さまに
 「ありがとうございました。おいでいただいたのも何かのご縁ですので、またお待ちしております」
⑷ にわか雨に遭い駆け込んできたお客さまに
 「あいにくでございましたね。このタオルでぬれたところをお拭きになって少々お休みくださいませ」
⑸ 予約の時間に遅れるという電話に
  「ご連絡ありがとうございます。理髪を少し急がせていただきますが、きっちり仕上げますのでご安心ください」

【解説】

 ヘアサロンで得意客になってもらうには、どのようなことを意識してお客さま応対をするのがよいのかを考える問題です。まず、親しみやすいお店とはどのようなお店でしょうか。居心地がよい、スタッフの感じがよい、融通が利く、詳しく話さなくても要望が伝わるなどが考えられます。選択肢⑴~⑸はそれぞれお客さまの状況に合わせて、相馬が行った応対です。

 では、お客さまの状況に合わせた愛想のよい応対とはどのようなことかを見ていきましょう。

 不適当の⑴を選んだ受験者は61.9%と正答率はやや低い結果となりました。具合が悪いのでキャンセルしたいというお客さまに「それは残念ですね」と言うのは○。スタッフとして、お客さまが来られなくなり残念という気持ちを表すだけでなく、今日髪を切りたかったのに切ることができないお客さまの気持ちに寄り添った応対です。
 しかし、不適当なのはその後。お客さまは具合が悪いのですから、次の予約を決める余裕などありません。また、「具合が悪い」に対するいたわりの言葉がないのもマイナス点。この場合は、「どうぞお体お大事になさってください」「体調がよくなりましたらご連絡お待ちしております」などが適切な言葉です。

 その他は適当な応対となります。

 ⑵お客さまの勘違いかもしれないと気付いても、直接指摘するような言い方は避けましょう。「お受けしたいのはやまやまなんですが」と和らげた表現で知らせることで、お客さまに気まずい思いをさせなくて済みます。

 ⑶「ありがとうございました」「またお待ちしております」は、どのお客さまに対しても言うことです。初めてのお客さまに、それにプラスして「何かのご縁ですので」と言ったのは、お店として「あなたが来てくれてうれしい」と伝えることにもなります。嫌な気持ちになる人はいないでしょう。これがまさに「愛想のよい応対」です。

 ⑷雨にぬれたお客さまに言葉で寄り添い、具体的にタオルを渡す気遣いをしています。お客さまにとってはうれしい応対です。

 ⑸予約に遅れるのは何か事情があってのこと。お客さまにとっても本意ではありません。また、遅れたら雑にされるのではないか、後の予定に差し支えないかという不安もあるでしょう。「きっちり仕上げます」と聞けば安心します。不安を払拭する言葉掛けです。

 お客さまが得意客になるのは、そのお店が親しみやすいからです。お客さまに寄り添い、そのときの状況に合わせた応対をすることで結果として得意客になってくれます。ここで言う「愛想のよい応対」とは、単に明るさや腰の低さだけではありません。相手の状況に配慮した、心苦しさや引け目を感じさせないような応対もあることをご指導いただきたいと存じます。

(『就職指導ニュースvol.50』より)