【ビジネス文書検定】 取引先に対する謝罪文を適切な表現で書く

第69回 ビジネス文書検定2級(表現技能)より

【問題】

Q.次は、製品製造の停止を知らせる通知状の一部です。この中の下線部分⑴~⑸を、ビジネス文書として適切な言い方に書き改めなさい。

【解説】

 社外に出すビジネス文書の表現についての総合問題です。適切な敬語を使っているか、「手紙用語」を適切に用いているかなどが問われます。
 問題文は「丁寧で改まったビジネス文の表現」で書かれており、同等の表現で書き改め、全体の統一感を図ることが必要です。特にこの文書は取引先に対し「製品製造の停止を知らせる内容」です。相手に謝罪の姿勢が伝わるような表現が求められます。
 解説は以下の通りです。

⑴ご承知のことと存じますが
 このほか、①「ご承知になって(承知されて)いらっしゃることと存じますが」、②「ご承知と存じますが」なども正答になります。
 しかし①はやや冗長、②は簡潔過ぎる感があります。

⑵停止いたしております
 「停止いたします」という解答が多くありましたが、問題文の記述は正確に読む必要があります。製造は“すでに”停止しているため、「停止いたします」という表現にすると“これから”停止するという意味になってしまいます。
 また、「○○している」を敬語にする際、「して」を敬語表現に変えずに「○○しております」といする受験者が非常に多い傾向があります。しかし、より丁重で改まった表現である「いたしております」を使う方がベストです(二重敬語であるとの指摘もあるが、そうではありません)。

⑶ご迷惑をお掛けいたしますが
 解答には以下の3パターンがありました。
 ①「掛けますが」……口頭表現的であり、丁寧さの度合いとしては普通。
 ②「お掛けしますが」……謙譲語「お~する」を使った表現。①よりは丁寧で相手を敬っている。
 ③「お掛けいたしますが」……謙譲語「お~いたす」を使った表現。最も敬意が高い。
 ①②と答えた受験者が多い結果となりました。しかし、この文書の内容や全体の調子に合わせるならば①は明らかに敬意に欠けます。最低限でも②の表現で書き表したいですね。

⑷事情ご賢察(ご高察・ご了察)の上
 相手の納得を得たいときなどに使う決まり文句で、⑸と合わせて使うのが一般的です。ここでの「事情」はこちらの事情を指しているので「ご」は不要。「ご賢察」「ご高察」「ご了察」はいずれも「推察する」の尊敬語で二重敬語にあたりますが、「ご」をつけて使用する慣習に従います。文書専用の言い回しです。
なお、「察した」を「ご理解」と書き換えた解答が多くありましたが、採点では許容されていません。「ご拝察の上」もよくある解答ですが、「拝察」は謙譲語なので尊敬の「ご」を付けても尊敬語として使用することはできません。

⑸ご容赦くださいますよう、お願い申し上げます
 問題文には「許してくれるよう」と書かれているので、ここでは忠実に「ご容赦くださいますよう(くださるよう)」と書き換える必要があります。ここ最近、問題文に関係なく「いただく」を付けて敬語にしようとする「いただく」一辺倒の解答が多い傾向にありますが、あくまでも問題文に基づいて「くださる」と「いただく」の表現を選択し、使い分ける意識をご指導ください。

 (『就職指導ニュースvol.50』より)