【ビジネス実務マナー検定】 ビジネスの場での電話の取り次ぎは簡潔に、素早く

第65回 ビジネス実務マナー検定3級(電話実務)より

【問題】

 小柳恵美は取引先のY氏から鈴木課長宛ての電話を受けたが、課長は席を外していたので折り返し電話すると返答し、まもなく席に戻った課長にそのことを伝えた。しかし課長はY氏になかなか電話せず、30分後に再度Y氏から電話があった。このような場合のY氏の対応と課長への取り次ぎ方について、次の中から適当と思われるものを一つ選びなさい。

(1)Y氏に「鈴木でございますね。少々お待ちください」とだけ言い、課長に「Y様からお電話で
す」
    と言って取り次ぐ。
(2)Y氏に「鈴木でございますね。少々お待ちください」とだけ言い、課長に「Y様からお電話です

    が、折り返しになさいますか」と言って取り次ぐ。
(3)Y氏に「鈴木には伝えましたが、お電話せず申し訳ございません」と言い、課長に「Y様からお

    電話を頂いてしまいました」と言って取り次ぐ。
(4)Y氏に「鈴木には伝えましたが、お電話せず申し訳ございません」と言い、課長に「Y様からお

    電話ですが、いかがなさいますか」と言って取り次ぐ。
(5)Y氏に「鈴木でございますね。少々お待ちください」とだけ言い、課長に「Y様からお電話です

    が、お急ぎなのではないでしょうか」と言って取り次ぐ。
 
 

【解説】

 電話の取り次ぎに関する基本的な問題です。小柳はY氏に「折り返し電話する」と返答し、それを課長に伝えました。この時点で小柳は役割を果たしたことになります。課長がすぐに電話をしなかったのは何か事情があるからでしょう。学生にはそれを踏まえて考えさせたいですね。

 適当は(1)。課長は席に戻っているのですから余計なことは言わず通常通りに取り次げばよいのです。(1)を選んだ受験者は44.4%、正答率は低い結果となりました。

 選択肢をよく見ていきましょう。

 小柳はY氏に、(1)と(2)(5)では「鈴木でございますね。少々お待ちください」、(3)(4)は「鈴木には伝えましたが、お電話せず申し訳ございません」と言っています。まずこの部分で(3)(4)は不適切だと気付くことができるかどうかです。


 小柳が折り返し電話すると言った手前、「自分は課長に伝えたと言っておきたい」「課長が電話しなかったことをわびたい」という心情は理解できますが、このように言うのは「私は悪くない」と自分を正当化しているようなものです。取り次いだ後でY氏と直接話すのは課長ですから、小柳が言ったのは余計なことです。課長への言葉でも、(3)「Y様の方からお電話を頂いてしまいました」は「本来はこちらから電話すべきなのに」と電話をしなかった課長を非難しているようなニュアンスがあり、部下から上司に向かって言うべきことではありません。(4)「いかがなさいますか」も捉え方によっては皮肉に聞こえるでしょう。(3)を選んだ受験者は7.8%、(4)は21.0%でした。

 (2)は課長に「折り返しになさいますか」と言ったのが不適当です。課長が別の用件で手が離せないなら別ですが、そのような状況でもありません。課長の心情や状況を勝手に斟酌(しんしゃく)しているのが余計なことです。(2)を選んだ受験者は10.1%でした。

 (5)は課長に「(Y氏は)お急ぎなのではないか」と言ったのが不適当です。折り返しを待っているはずのY氏が再度かけてきたのですから、急ぎであろうことは想像がつきます。課長もそれは分かっているはずで、わざわざ部下から言われるのは気持ちのよいものではありません。(5)を選んだ受験者は16.6%でした。

 ビジネスの場での電話の取り次ぎには、電話の相手(Y氏)、取り次ぐ者(小柳)、取り次ぐ相手(課長)の3者が存在します。双方を仲立ちする小柳は脇役に過ぎません。脇役は簡潔に素早く取り次ぐのが役割です。余計なことを排除し、ビジネスの場に適した取り次ぎ方について、本問を通じてご指導をお願いいたします。 (『就職指導ニュースvol.54』より)