【秘書検定】 秘書の職務範囲を踏まえて適切な対応をする
第128回 秘書検定2級(職務知識)より
【問題】
秘書Aの上司(部長)が外出中に,取引銀行の支店長が転勤のあいさつに訪れた。上司はあと15分ほどで戻ってくる予定である。このような場合,Aはどのように対応したらよいか。次の中から不適当と思われるものを一つ選びなさい。
(1) 在籍している課長で良いかと尋ね,良いということなら課長に伝えて応対してもらう。
(2) 上司は留守と話して世話になった礼を言い,上司に伝えておくと言って帰ってもらう。
(3) 上司は15分ほどで戻るが待ってもらえるかと尋ね,よいということなら待ってもらう。
(4) 上司は15分ほどで戻る予定だが,どのようにするかと支店長の意向を尋ねてそれに従う。
(5) 転勤ならぜひ会ってもらいたいと言って,上司が在籍している時間を伝えて出直してもらう。
(1) 在籍している課長で良いかと尋ね,良いということなら課長に伝えて応対してもらう。
(2) 上司は留守と話して世話になった礼を言い,上司に伝えておくと言って帰ってもらう。
(3) 上司は15分ほどで戻るが待ってもらえるかと尋ね,よいということなら待ってもらう。
(4) 上司は15分ほどで戻る予定だが,どのようにするかと支店長の意向を尋ねてそれに従う。
(5) 転勤ならぜひ会ってもらいたいと言って,上司が在籍している時間を伝えて出直してもらう。
【解説】
上司が留守中の来客応対に関する問題です。このような場合には、上司と相手の関係や訪問の目的に応じた臨機応変な対応が求められます。設問に書かれている以上のことを想像する必要はありませんが、シチュエーションを正しく理解するためには、ビジネス上の共通認識が欠かせません。
本問におけるポイントは二つです。
一つ目は上司と来客の関係性です。設問を見ると、上司と「取引銀行の支店長」ですからビジネス上の付き合いであることは明らかです。つまり、会社と取引銀行の間柄なのであり、現在の支店長が転勤した後も新しい支店長との関係が続くということです。
二つ目は訪問の目的です。転勤のあいさつは、正式に辞令が出てから新天地に赴くまでの期間に取引先を訪問し、転勤の旨や後任の紹介、今までの礼を短時間で述べる儀礼的、形式的なものです。取引先の数も少なくなく、一日にできるだけ多く訪問するためには予約をせずに尋ねることになります。
これらを踏まえて検討すると、不適当は(5)。相手はこの時期、取引先へのあいさつ以外にも業務の引継ぎや引っ越しの手続きなどで多忙である可能性が高いと考えられます。そのため、上司が在籍している時間を伝えて先方に出直してもらうという選択肢はあり得ません。(5)を選んだ受験者は61.8%にとどまりました。「もう会わなくなるのになぜ約束をしていないのか」「別れを惜しまないのか」と考えたのでしょうか。あくまで支店長とはビジネス上の付き合いであり、転勤のあいさつも儀礼的なものです。プライベートの付き合いとの違いを認識させたいところです。
その他の選択肢を見ていきましょう。
(1)は、課長に応対を頼んでいます。先述のように、転勤のあいさつは礼を欠いていないことが取引先に伝わればよいので、上司がいない場合に代わりの者に受けてもらうのはごく一般的な対応です。
(2)は、本来ならば(1)のように上席の者に受けてもらうのが理想ですが、それも難しい場合は秘書が応対し上司に伝えてもよいのです。受験者の32.5%はこの選択肢が不適当だと答えました。世話になったと礼を言ったのが出過ぎているとか、「帰ってもらう」とAが勝手に判断した点が不適切であると映ったのでしょう。
(3)(4)は、いずれも相手にどうするかと尋ねていますが、設問には「上司はあと15分ほどで戻ってくる予定」とあります。今後上司と支店長が会わなくなることを考えると、15分程度であれば相手の意向を尋ねてみて、場合によっては待ってもらうことも選択肢の一つです。
経験により身に付く常識や認識は人それぞれです。今回扱った転勤のあいさつは、特に学生・生徒にとって具体的に想像するのが難しいのではないでしょうか。慣用句や慶弔用語であれば、頻出問題を暗記すれば済みます。しかし、こうした認識のようなことはテキストや参考書に書かれていないことも多いので、授業ではそのあたりを念頭に置いたご指導をお願いいたします。
学生・生徒に対して解説する際は、「なぜその選択肢を選んだのか」「なぜ他の選択肢を選ばなかったのか」と質問するなどして理解度を把握し、それに応じてフォローすることが必要でしょう。
(『就職指導ニュース』vol.53より)
本問におけるポイントは二つです。
一つ目は上司と来客の関係性です。設問を見ると、上司と「取引銀行の支店長」ですからビジネス上の付き合いであることは明らかです。つまり、会社と取引銀行の間柄なのであり、現在の支店長が転勤した後も新しい支店長との関係が続くということです。
二つ目は訪問の目的です。転勤のあいさつは、正式に辞令が出てから新天地に赴くまでの期間に取引先を訪問し、転勤の旨や後任の紹介、今までの礼を短時間で述べる儀礼的、形式的なものです。取引先の数も少なくなく、一日にできるだけ多く訪問するためには予約をせずに尋ねることになります。
これらを踏まえて検討すると、不適当は(5)。相手はこの時期、取引先へのあいさつ以外にも業務の引継ぎや引っ越しの手続きなどで多忙である可能性が高いと考えられます。そのため、上司が在籍している時間を伝えて先方に出直してもらうという選択肢はあり得ません。(5)を選んだ受験者は61.8%にとどまりました。「もう会わなくなるのになぜ約束をしていないのか」「別れを惜しまないのか」と考えたのでしょうか。あくまで支店長とはビジネス上の付き合いであり、転勤のあいさつも儀礼的なものです。プライベートの付き合いとの違いを認識させたいところです。
その他の選択肢を見ていきましょう。
(1)は、課長に応対を頼んでいます。先述のように、転勤のあいさつは礼を欠いていないことが取引先に伝わればよいので、上司がいない場合に代わりの者に受けてもらうのはごく一般的な対応です。
(2)は、本来ならば(1)のように上席の者に受けてもらうのが理想ですが、それも難しい場合は秘書が応対し上司に伝えてもよいのです。受験者の32.5%はこの選択肢が不適当だと答えました。世話になったと礼を言ったのが出過ぎているとか、「帰ってもらう」とAが勝手に判断した点が不適切であると映ったのでしょう。
(3)(4)は、いずれも相手にどうするかと尋ねていますが、設問には「上司はあと15分ほどで戻ってくる予定」とあります。今後上司と支店長が会わなくなることを考えると、15分程度であれば相手の意向を尋ねてみて、場合によっては待ってもらうことも選択肢の一つです。
経験により身に付く常識や認識は人それぞれです。今回扱った転勤のあいさつは、特に学生・生徒にとって具体的に想像するのが難しいのではないでしょうか。慣用句や慶弔用語であれば、頻出問題を暗記すれば済みます。しかし、こうした認識のようなことはテキストや参考書に書かれていないことも多いので、授業ではそのあたりを念頭に置いたご指導をお願いいたします。
学生・生徒に対して解説する際は、「なぜその選択肢を選んだのか」「なぜ他の選択肢を選ばなかったのか」と質問するなどして理解度を把握し、それに応じてフォローすることが必要でしょう。
(『就職指導ニュース』vol.53より)