【秘書検定】 秘書の職務範囲を踏まえて適切な対応をする
第127回 秘書検定2級(職務知識)より
【問題】
秘書Aの上司(営業部長)は,すぐ戻ると言って近くに外出している。そこへ本部長から,「P社との取引について部長に確認したいことがあるので,見積書を持ってすぐ来てもらいたい」と連絡があった。見積書の保管場所はAも知っている。次はこのときAが本部長へ順に対応したことである。中から不適当と思われるものを一つ選びなさい。
- 上司はすぐ戻ると言って近くに外出していると伝えた。
- 確認するのはどのようなところか,代わりに話を聞いて上司に伝えようかと尋ねた。
- 上司が戻ってからでよいということだったが,見積書を先に持っていこうかと尋ねた。
- 先に持ってきてもらいたいと言われたので,すぐに届けた。
- そのとき本部長秘書に,今日の本部長のスケジュールを聞いておいた。
【解説】
上司が不在時の秘書の対応を問う問題です。正答を導き出すためには、組織や役職の関係性、指示内容、各登場人物の仕事への関わり方などを理解し把握していなくてはなりません。その上で秘書として最適な行動を考えることになります。ケース仕立ての問題は、キーワードやポイントとなる箇所に下線を引くことで、構造が整理され、読み落としを防ぐことができます。「本部長」など登場人物の役職や指示内容、「保管場所を知っている」といった前提条件がこれに当たります。
不適当は⑵。本部長は秘書Aに対し「P社との取引について部長に確認したい」と伝えてきたのです。上司が直接呼び出されているのですから、秘書が代わりに話を聞いて対応できる用事でないことは明らかです。上司が戻り次第、本部長のところに行くべき用件であることが想定できます。⑵を選んだ受験者は46.8%と、正答率は低い結果となりました。
⑴は、Aが知る上司の状況をそのまま伝えています。上司が応対できない理由と戻る時間のおおよそのイメージ(すぐ戻る)を本部長に伝えており、適当な対応です。
⑶は秘書の職務の範囲を考える選択肢です。設問に「見積書の保管場所はAも知っている」とあるので、Aが見積書を持っていくことは可能です。ポイントは、上司の許可についてどう判断するか。本部長が求めているのは見積書です。本部長は上司の直属の上司なので、すでに内容は知っているはずです。さらに「すぐ来てもらいたい」という指示から、本部長が急いでいることが分かります。この場合は、上司の許可がなくても行動してよいと判断できるでしょう。
⑷は、⑶と連動しています。「先に持ってきてもらいたい」と本部長から指示があったのですから、すぐに届けるのは当たり前の行動です。⑶あるいは⑷を不適当とした受験者は約3割に上りました。勝手に提案したり書類を持ち出したりするのはいけないと考えたのでしょうか。しかし、秘書の全ての行動に上司の許可が必要なわけではありません。状況や相手の用件に応じて、できることとできないことは変わります。不在の上司に代わり、自分にできる範囲で本部長の要望に応じる行動は秘書として適切です。席を外せば、外出から戻った上司への対応が遅れるとまで考えを巡らせたのかもしれませんが、部員などに伝言を残すなどすれば問題ありません。
⑸は、部長はすぐ戻ると言って近くに外出していますが、正確な帰社時間は知らされていません。上司と本部長がスムーズに会えるように、本部長のスケジュールを確認することは上司の助けになる行為です。また、本部長のスケジュールは本部長秘書に聞くのが基本ですから、適切な行動と言えます。
この設問に答えるためには、組織や役職の関係性のほか、秘書に求められる基礎的なマナー(例えば、席の外し方、口外してよいこと、悪いこと)などを学び、設問の状況から総合的に判断できるようになる必要があります。指導者のみなさんは、正答以外の選択肢についても解説し、特に学生に対しては見積書や会社の役職、仕事の仕組みについて丁寧に説明すると、理解が進みます。
(『就職指導ニュース』vol.52より)
不適当は⑵。本部長は秘書Aに対し「P社との取引について部長に確認したい」と伝えてきたのです。上司が直接呼び出されているのですから、秘書が代わりに話を聞いて対応できる用事でないことは明らかです。上司が戻り次第、本部長のところに行くべき用件であることが想定できます。⑵を選んだ受験者は46.8%と、正答率は低い結果となりました。
⑴は、Aが知る上司の状況をそのまま伝えています。上司が応対できない理由と戻る時間のおおよそのイメージ(すぐ戻る)を本部長に伝えており、適当な対応です。
⑶は秘書の職務の範囲を考える選択肢です。設問に「見積書の保管場所はAも知っている」とあるので、Aが見積書を持っていくことは可能です。ポイントは、上司の許可についてどう判断するか。本部長が求めているのは見積書です。本部長は上司の直属の上司なので、すでに内容は知っているはずです。さらに「すぐ来てもらいたい」という指示から、本部長が急いでいることが分かります。この場合は、上司の許可がなくても行動してよいと判断できるでしょう。
⑷は、⑶と連動しています。「先に持ってきてもらいたい」と本部長から指示があったのですから、すぐに届けるのは当たり前の行動です。⑶あるいは⑷を不適当とした受験者は約3割に上りました。勝手に提案したり書類を持ち出したりするのはいけないと考えたのでしょうか。しかし、秘書の全ての行動に上司の許可が必要なわけではありません。状況や相手の用件に応じて、できることとできないことは変わります。不在の上司に代わり、自分にできる範囲で本部長の要望に応じる行動は秘書として適切です。席を外せば、外出から戻った上司への対応が遅れるとまで考えを巡らせたのかもしれませんが、部員などに伝言を残すなどすれば問題ありません。
⑸は、部長はすぐ戻ると言って近くに外出していますが、正確な帰社時間は知らされていません。上司と本部長がスムーズに会えるように、本部長のスケジュールを確認することは上司の助けになる行為です。また、本部長のスケジュールは本部長秘書に聞くのが基本ですから、適切な行動と言えます。
この設問に答えるためには、組織や役職の関係性のほか、秘書に求められる基礎的なマナー(例えば、席の外し方、口外してよいこと、悪いこと)などを学び、設問の状況から総合的に判断できるようになる必要があります。指導者のみなさんは、正答以外の選択肢についても解説し、特に学生に対しては見積書や会社の役職、仕事の仕組みについて丁寧に説明すると、理解が進みます。
(『就職指導ニュース』vol.52より)