【サービス接遇検定】 お客さまとの信頼関係を損なわないよう対処する

第51回 サービス接遇検定2級(実務技能)より

【問題】

Q.紳士服店勤務の下山宏人のところに、スラックスの寸法直しを依頼していたお客さまが控えを持たずに来店した。代金は既に受け取っている。このような場合、下山はこのお客さまにどのように対応するのがよいか。次の中から不適当と思われるものを一つ選びなさい。

(1)本人であることが確認できないのでと言って、控えを持ってきてもらいたいと言う。
(2)間違いがないかを確認させてもらうと言って、寸法直しの箇所と直しの内容を尋ねる。
(3)本人であることを確認させてもらいたいと言って、名前、住所、電話番号などを尋ねる。
(4)店に残っている伝票と品物を見せて確認してもらい、間違いがなければ伝票にサインをもらう。
(5)間違ったものを渡すといけないからと言って、買い上げた日や、どのようなスラックスだったかを尋ねる。

【解説】

 寸法直しを依頼したお客さまが来店時に控えを持参しなかったとき、本人確認をどのように行うかという問題です。ルールにこだわり過ぎず、お客さまのニーズに応え満足してもらうためには臨機応変な対応が求められます。
 
 不適当は(1)。お客さまに渡す控えは「お客さまが買った商品を当店で預かっている」という意味の証明書であり、覚書です。それがなければ品物を渡せない「引換券」とは意味が違うことを理解しておかなければなりません。そこを混同したのか(1)を選んだ受験者は60.8%でした。
 お客さまに対して「控えを持ってきてもらいたい」と言うのは、せっかく来店してくれた相手に再度足を運ぶよう求めることです。このような杓子定規の対応では、店に対するお客さまの印象は悪くなり、二度と利用してもらえなくなるでしょう。控えにこだわることなく、ほかの方法で本人確認をして商品を渡すべきでした。

 その他の選択肢は「控え」に代えて本人確認する方法です。順に考えていきましょう。

 (2)は記憶で本人かどうかを確かめています。来店者が寸法直しを依頼した本人であれば、どの箇所をどのように直すかは分かっているはずです。そのことは立派な本人確認です。またこの方法にはもう一つメリットがあります。直しの内容を確認できることです。店がお客さまの依頼に正しく応えているかどうか。控えがあればそれで確認するところですが、それができない代わりにお客さまに内容を言ってもらい、確認するのです。

 (3)は一般的な本人確認の方法です。名前や住所などが書かれている控えの写しは店側に残っているでしょう。それと照らし合わせれば、確実に本人確認をすることができます。

 (4)お客さまへの確認の仕方が不十分と考えたのか、この選択肢を選んだ受験者は19.2%でした。確かに、店に残っている伝票と品物を確認してもらうだけでは、本人ではない可能性がゼロとは言えません。店のリスクは、この選択肢が一番大きいかもしれません。しかし、サービス業は店とお客さまとの信頼関係で成り立ち発展していくものです。顧客獲得につながる道筋として必要なことです。

 (5)は、さらに細かいお客さま情報による確認です。店が本人かどうか確かめるには、最低限、氏名の確認が必要ですが、それだけでは同姓同名の可能性もあり取り違えることがあるかもしれません。そこで、買った本人しか分からないことを聞くことによって、間違いを防ぐのです。この種の情報を聞くときは、いきなりいろいろと聞く前に、「(控えもないし)間違った品物を渡すといけないので」と理由をしっかり述べることが大事です。このステップを省くと、お客さまを不愉快な気分にさせることがあるため要注意です。
 
この問題を通して、お客さまとの関係性を指導していただきたいと存じます。

 (『就職指導ニュースvol.49』より)