【ビジネス実務マナー検定】 自分が今すべきことの判断を的確にする。

第60回 ビジネス実務マナー検定2級(必要とされる資質)より

【問題】

Q.水村真司は新製品の商談で得意先を訪問するため、朝9時に新人の足立と駅で待ち合わせをしていた。ところが、9時を少し過ぎに足立から携帯電話に、「体調が優れずいけない。会社も休ませてもらいたい」と連絡が入った。今日は製品の説明を始めて足立に任せることになっていた。次は、このとき水村が順に行ったことである。中から不適当と思われるものを一つ選びなさい。

(1)足立に、もっと早く連絡しないと駄目と言った後、係長にも連絡するように指示した。
(2)係長への連絡は自分は後ですることにし、約束の時間に遅れないように急いで得意先へ向かった。
(3)担当者に、足立が都合で来られなくなったことをわび、説明は自分がすることの了承を得た。
(4)説明では旧製品との違いや優れた点をアピールし、相手の反応をうかがった。
(5)得意先からの帰りに係長に連絡し、商談の報告とともに足立から連絡があったかを確認した。

【解説】

 ビジネスパーソンに求められる資質の領域から、適切な行動力、判断力に関する問題です。
商談で取引先を訪問するため、新人足立と待ち合わせた水村。状況設定の1つ目は、足立から体調不良で行けない、会社も休むと連絡が入ったことです。2つ目は、商品の説明を初めて足立に任せることになっていたということです。
 選択肢は行動が時系列で並んでいます。順に見ていきましょう。

 (1)突然の体調不良は仕方がありませんが、足立が連絡してきたのは待ち合わせ時間を過ぎてからであり、責任感の欠如も甚だしいです。得意先との約束の時間に遅れることにもなりかねないため、まず水村が、連絡が遅いことについて注意したのは適切です。また、足立は会社も休むと言っていますが、水村はそれを許可する立場にありません。休暇などの所属課員の勤怠管理をするのは現場の監督職である係長ですから、係長に連絡するよう指示したのも適切な判断と言えます。

 (2)設問時の状況で最も大切なのは、得意先との約束の時間に遅れないことです。(1)の水村の指示に従って足立は係長に連絡しているでしょうから、係長は水村が一人で商談に向かうことを知っているでしょう。よって、この時点で自分が連絡するまでもないと考え、連絡を後回しにしたのは問題ないことです。しかし「連絡・報告は小まめにするのが基本」という固定観念からなのか、(2)を不適当と選んだ受験者は51.9%と半数を占めました。

 (3)商談の約束をした際に、足立が同行すると伝えていたでしょうから、来られなくなったとわびるのはよいことです。しかし、得意先担当者にとっては製品の説明を聞ければよいので、誰が説明するかはどうでもよいことです。わざわざ、水村が説明することに了承を得る必要はありません。足立が製品の説明をするはずだったというのはあくまで内輪の新人教育上の都合で、得意先には関係ありません。よって(3)が不適当ですが、正解した受験者は26.2%でした。

 (4)商談の目的は、新製品のよさを知ってもらい、販売につなげることです。よって、旧製品との違いや優れた点を積極的にアピールしたのは適切な行動です。また、相手の反応から何に関心があるのか、買ってもらえそうかを察知することも商談においては大切であり適切な行動です。

 (5)係長は商談の成り行きが気になっているはずですから、商談後はなるべく早く結果を報告します。会社に戻る途中に連絡を入れたのは適切です。足立の件は、(1)で連絡するよう指示したことが実行されたかの確認であり、報告の付け足し程度のことと考えて差し支えありません。

 さまざまな場面で適切な行動をとるためには、相手や状況を踏まえた判断力が要求されることを、十分に理解させるようご指導ください。

(『就職指導ニュースvol.49』より)