【ビジネス文書検定】 口頭表現と異なる「文書」の表現を使いこなす

第66回 ビジネス文書検定2級(表現技能)

【問題】

Q.次は、取引条件の照会状に対する回答状の一部です。この中の下線部分(1)~(5)を、ビジネス文書の表現として適切な言い方に直しなさい。


【解説】

 社外に出すビジネス文書の表現についての総合問題です。
ポイントは次の2点で、
 ①手紙用語や敬語を、正しく、適切に用いて書き表しているか。
 ②問題文全体の「丁寧で改まったビジネス文書の表現」を損なわないように表現をされているか。
これらを踏まえた解答例は、以下の通りです。

【解答例】
(1)拝受いたしました
(2)ご指名くださり、厚く御礼申し上げます
(3)ご回答申し上げます
(4)何とぞご検討の上、ご用命を賜りますよう
(5)ご遠慮なく何なりとお申し付けくださいますようお願いいたします。

それでは解答を順に考えていきましょう。

 (1)は問題文では「受け取った」となっているため「拝受」が適切です。解答の中には「拝見」や「拝読」も多くあったようですが、「受ける」をきちんと踏まえておきましょう。ちなみに「ご拝受いたしました」は、「ご~いたす」と「拝」に謙譲の意味を含む「拝受」の二つの謙譲語を重ねて使った二重敬語です。敬語の使い方としては不適切ですので、注意しましょう。

 (2)は、問題文では「指名してくれて」となっているため、これを踏まえて尊敬語の「ご~くださる」の形式で書き表すことになります。「指名してくださり」も考えられますが、ここではより敬意が高い「ご指名くださり(くださいまして)」を用いましょう。

 (3)の「ご(お)~申し上げます」という形式は、「言う」ではなく「する」の謙譲語で、最も敬意が高い言い方です。「回答します」は、丁寧語「ます」を使ってはいますが、口頭での普通の言い方で敬意が不足しています。

 (4)の「検討の上」は、検討するのは相手なので尊敬語を使って「ご検討の上」としましょう。「注文してくれるよう」は、前述の(2)に倣えば「ご注文くださいますよう」などになります。これでもよいですが、このようなケースでは「ご用命を賜りますよう」が決まり文句です。「用命」は、「用事を命ずること=注文・発注をする」という意味です。

 (5)のように問題文が長くなると、文全体の意味を「意訳」して問題が求めている言い方から離れて解答してしまう方もいます。この場合であれば、「お気軽にどのようなことでもおっしゃっていただければ幸いです」などとなります。意味は間違っていませんが、ビジネス文書として、また全体の敬意の度合いと比べると整っておらず望ましくありません。
 
 ビジネス文書には、対面や電話で「話す」時の口頭表現とは異なる、「文書」の体裁を整えるための表現があります。敬意が高い表現になればなるほどなじみがなく、書き表すときに適切な表現が出てこないこともあるでしょう。敬語や適切な手紙用語を理解して使いこなすことで、文全体として尊敬の度合いの高い表現になることを理解させるご指導が重要です。

(『就職指導ニュース』vol.48より)